『アートの価値』

 

~第一部:コレクションするということ~
人はなぜアートを集めるのか?その理由は3つ。マネー、パワー、ビューティーだ。「マネー」は買ったものの価値が上がるかもしれないという投資の要素。「パワー」はアートを所有することで得るステータス。「ビューティー」とは作品の美そのもの。コレクションする理由にこの3つの要素が占める割合は時代や文化によって異なるが、アートの購入においては常に全ての要素が介在している。日本では過去100年以上、西洋の絵画、特に印象派がコレクターたちに愛されてきた。彼らはどんな理由で買い続けてきたのか?日本で30年間アートビジネスを続けてきた筆者が見たアート蒐集の変遷とは。

~第二部 アートの本当の楽しみ方~
Seeing(アートを見て体験すること)とlooking(情報を基にアート見ること)の違いは何か。オーディオガイドや作品ラベルに惑わされず、自分なりの見方でみること、そして何よりも本物の作品をみることが大切。デジタル画像を見るだけでは、グルメ雑誌でご馳走の写真を見て食べたような気になるのと同じようなもの。時間をかけてじっくり見よう。アートは魂の糧となり、心を豊かにしてくれる。

マイケル・フィンドレー

Michael Findlay
アートディレクター、アートディーラー

1945年スコットランド生まれ。1964年よりニューヨークでアートディーラーとして活躍。ヨーゼフ・ボイスやショーン・スカリーなどの作家をアメリカで初めて紹介したほか、ジョン・バルデッサリ、スティーブン・ミューラーなど当時無名だった作家を見出し、ニューヨークにおける彼らの初の個展を手がけた。1984年にクリスティーズに入社。1992年まで同社の印象派・近代絵画部門長、2000年まで取締役兼美術部門インターナショナル・ディレクターを歴任し、数々の名品のオークションに携わった。クリスティーズ在籍中は1986年からおよそ15年間、頻繁に来日。日本の美術市場やコレクターを最も良く知る欧米の画商の一人でもある。現在はニューヨークの最大手のギャラリーのひとつであり、2013年11月にクリスティーズのオークションで、フランシス・ベーコン『ルシアン・フロイドの3つの習作』を美術品の史上最高落札額(142億4千万円)で落札したことでも知られる、アクラベラギャラリーのディレクターを務める。