流 麻二果 展 「無色と白色」

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■ 開催趣旨

世界を舞台に活躍するアーティスト、流 麻二果の個展を開催します。
流は女子美術大学を卒業後、独自の作品制作に取り組み、個展やグループ展への参加を重ね、抽象と具象の境界を超えた鮮烈な絵画表現で高い評価を得てきました。 2002年から文化庁新進芸術家在外研修員としてニューヨークに滞在、フランク・ステラのスタジオでインターンを経験します。 その後、ポーラ美術振興財団の助成によりニューヨークとトルコに滞在しました。 トルコでは、ワークショップにより、参加者とともにタペストリーを制作するプロジェクトを開始。 共同作業により人々の輪を広げ、世界中につないでいく作品制作を継続しています。
流は「見知らぬ他者への興味、人間観察と想像力」により作品世界を構築します。

「・・・私は絵画で他人を推察する。 一方、私はインスタレーションで他人を想像する。 ・・・外見からの考察と、内側からの創造、作品を通して私はまだ見知らぬ他者への興味を実行している」 (流のステイトメントより)

人間に対する興味、日々の人間観察を蓄積し抽出した絵画作品は、抽象性を帯び、有機的な形態が身体を感じさせます。 カンヴァスを染め上げるように色を重ねて完成される画面は、美しく、時に不穏で、現代に生きる私たちの心象風景を呼び起こします。
2011年3月の東日本大震災以降、アーティストとして何ができるのか自問し続けた流は、「ときに脅威ともなる自然の強さと美しさを表現することが、今の自分の仕事」と感じ、東北の自然をテーマに作品を制作してきました。 同時に、「一時画伯」というプロジェクトを立ち上げ、アーティストたちによるこども向けのワークショップを開催しています。
流のこうした活動をふまえ、本展では、作品の重要な要素である「色」に焦点を当てます。 2007年から2011年の絵画作品5点は、大胆で広がりのある画面構成に、色彩豊かなストロークが、流の言う「色のなかの色」を感じさせます。 人間の身体の曲線なのか、山の稜線なのか。 重層的で謎めいた作品世界に魅了されます。
いっぽう、「無色/白色」のソフト・スカルプチャーのシリーズ「別角度」は、同じ物が文化背景や価値観の違いによってまったく別のとらえられ方をする、ということを、流が世界のさまざまな場所で体験したことから生まれました。 紙袋、鳩、パンなど身近なモチーフについて、異なる文化圏の人が抱くイメージ、ストーリーを聞き、モチーフのみを白い毛糸で編み立てます。 色を無くすことと、編み物という手法によって、ニュートラルな「物」の普遍性が際立ち、日常を「別の角度から見ること」を観る者に問いかけます。
「別角度」シリーズ新作のため、「物」をめぐり、学生と流が対話するワークショップを行います。 対話の中で、流は他者のストーリーを追体験し、それを作品に表現します。
また、展示構成は、作家と対話を重ねながら、学習院女子大学2013年度博物館実習生と、実習指導にあたる児島やよい(非常勤講師)により行います。